エゴイスト 〜不二side〜 初めてだった、こんな気持ちは 壊したい…奪いたい…僕の物にしたい 越前は、僕にとって格好の餌食となった こんなにも僕の好奇心を満足させてくれる子は、他には居ないね… 「不二、あまり虐めるな…」 「あぁ、手塚。やだなぁ、見てたの?覗き?」 「…ふざけるな。俺は真剣に話してるんだ」 保健室から出ると、手塚が壁にもたれかかって僕を待ち構えていた。 真っ直ぐに見詰められた視線 ふふ、手塚ってば…こんなに感情を剥き出して… 「だから、なんなの?真剣に話さなくちゃいけないことなんて…ないよ」 「…越前をからかうなと言ってるんだ。イメージとのギャップに、アイツは戸惑っている」 「だから?…僕のイメージなんて、作ってる方がいけないんだよ」 君もそうだったよね、手塚。 僕に対してのイメージを持って、接してきて… そして、僕に壊された。 君はもう、壊れたガラクタ同然なんだよ? 「それは俺に対しての嫌味か?…お前には、人を惹き付けるものがある」 「へぇ、そうなんだ」 「だからこそ、好印象を持たれる。それをお前が煩わしく思おうが、それが現実だ」 「うん。僕としては迷惑な話だけどね」 フッと目を細めて、手塚の隣に立った。 一瞬、強張った身体。 そんなに緊張しなくてもいいのに…。 「まだ怒ってるの?僕が君を壊したこと」 「当たり前だ…!!!俺がどれだけ苦しんだと…っ!」 「シッ…、越前君が起きちゃうじゃない…?」 手塚の唇に指を押し当てると、一層硬くなった表情。 そこまで警戒されると、何だか楽しいな。 「兎に角…、越前に手を出すのは止めろ…!アイツに、俺と同じ思いはさせたくない…」 「それは期待のルーキーだから…かな。それとも『越前リョーマ』だから?」 「…質問の意味が、良く判らんな…」 「君が心配するのは、越前のテニス?それとも…越前の身体?」 「…何を言わせたいんだ」 「さぁ、手塚の想像に任せるけど?」 「酷かもしれんが、テニスを心配している。俺は…お前の所為で暫く意欲が消失したからな…」 「簡単に壊される君が悪いんだよ。…越前も、弱いね。すぐに僕の手の内に転がるよ」 そう、越前は…弱いと言うより脆い。 突付けばすぐに壊れてしまいそう。 でもね…それじゃぁ僕の好奇心は全然満たないんだよ…? 「越前君には、少し苦しんでもらおうかな。壊れちゃったら、もう要らないし…」 「お前な…、そんなことをして、何が楽しいっ?」 「…楽しい?さぁ、そういう基準で考えたことなかったな」 「じゃあ、何だと言うんだ?」 「趣味」 「…悪趣味だな」 手塚の場合、この台詞が本気だから面白い。 僕に面と向かって悪趣味だなんて…一度壊れたから、そんな口が利けるのかな? 越前も、こんな風になるのかなぁ。 それも…面白いかもしれないけど。 「これ以上は越前に近づかないと、約束しろ」 「やだなぁ、約束?別にいいけど、僕が守るだなんて本気で思ってるの?」 「……………」 「僕を黙らせたり、行動を制限したりするのは不可能だって…あれほど壊す前に言ったのに」 『所詮君は、ガラクタと同じ壊れ物なんだよ』 「っ…………」 「反論は出来ないよね?だって君は…」 『事実、僕に壊されてるんだから』 「不二っ…」 「戒め、破っちゃ駄目じゃない。僕に逆らうと、どうなると思ってるの?」 もう興味はないけど、もう一度壊してもいいよ? 面白くはないけど…僕に意見するなんてムカツクしね。 手塚だって…あの悔しさを忘れたりはしてないよね? 「ぐ…っ………!」 「君は僕に堕ちたんだ。越前君の事は、僕が勝手に行動させてもらうから…いいよね?」 流石に手塚はプライドが高いね。 首を振る事はせずに…でも、言い返せないってもっと惨めだと思うなぁ。 「じゃあね、手塚。…僕は僕。君は君。過去の事に、拘る必要はないんじゃない…?」 なんて、拘る原因を作った僕の言葉じゃないけどね。 ま、手塚は黙ったようだから、後はゆっくり行動出来る。 楽しみだな、これからどうなるのか…ね。 |